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ねむれる母と子

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写真作品
櫻井陽司画 写真監修/藤森武 伊勢和紙 31x25cm(画面) 原画(デッサン)制作1948年
櫻井陽司自刻印章「狂人」+藤森武直筆署名  額装

情熱(passion)に内包される受難(passion)、その深奥に秘む狂気、そこからこそ新しい生命は立ち上ってくる。櫻井陽司自刻印章「狂人」の意は、passionという不合理を生きることであり、芸術無限―永遠―への渇望である。(東京銀座ギャルリさわらび「生誕100年 櫻井陽司展」2015 フライヤーより)

平成24年の暮れ、櫻井陽司さんのアトリエが取り壊される直前、私はアトリエの荷物等の整理のために、仕事の合間に何度か其処を訪れていました。整理をする時間は限られており、荷物の移動や保管も何人かの方に協力して頂きました。取り壊しのため立入禁止とされた後にも、もう一度だけと言ってお願いし、その際に発見されたのが、ハガキ大の汚れた箱に入ったガラス乾板でした。其処に写し出されていたのは、1948(昭和23)年作≪眠れる母と子≫。原画は既に失われていて、印刷されたその作品を陽司さんはアトリエにずっと掛けていました。この度、生誕100年櫻井陽司展にあたり、発見されたガラス乾板を元に、この作品が67年ぶりに復元されることとなりました。写真監修は、ギャルリさわらびの展示に共感していただき、また写真家土門拳の直弟子だった藤森武さんです。現在、東北5県巡回中の「藤森武写真展 みちのくの仏像」では、日本のカミの姿としての仏像への眼差しがあり、師土門とは一線を画した写真家藤森の世界が表出されています。画家櫻井陽司と写真家藤森武がぶつかり合った火花の如く産み落とされた本作ですが、母と子、それを見つめる描者、それぞれの間を結ぶ深い愛情が、見る者の心を打ちます。(平成27年神楽月に ギャルリさわらび 田中壽幸)

藤森武 略歴
写真家。1942(昭和17)年、東京生まれ。東京写真短期大学(現東京工芸大学)卒。62年、写真家土門拳に師事。67年、凸版印刷写真部入社。70年からフリーランサーとなり、古美術や仏像など日本文化伝承をテーマに活動。全国の六十余館に及ぶ博物館の収蔵品撮影を継続中。『白洲正子・私の骨董』(求龍堂)、『鉈彫 荒彫 謎の木彫仏』(玉川大学出版部)、『武士道―サムライたちへ』(ピエ・ブックス)、『藤森武写真展 みちのくの仏像』(山形美術館)他多数出版。日本写真家協会会員、土門拳記念館理事。

櫻井陽司 略歴
1915(T4)新潟県刈羽郡中鯖石村(現柏崎市)生まれ。1928(S3)上京。油絵を始める。1945(S20)板橋の大山にて戦災、作品焼失。1946(S21)職場美術協議会結成、第1回展より出品、47年より議長。1952(S27)麻生三郎、吉岡憲推薦「櫻井陽司素描頒布会(発起人代表 職美協中央美術研究所 杉本鷹)」。1957(S32)名古屋サカエ画廊個展、以後8回。1964(S39)愛知県美術館にて駒井哲郎と二人展。1965(S40)木村定三の紹介にて柏三屋主催展、以後10回。1975(S50)東京サヱグサ画廊個展。1977(S52)宇都宮上野百貨店個展、以後毎年10年。1982(S57)美術ジャーナル主催個展。1985(S60)紙舗直個展。1986(S61)名古屋「審美」個展。アートロベ個展、92年迄。1992(H4)名古屋「審美」第2回個展。1994(H6)アートロベ個展、2000年迄。2000(H12) 12月24日逝去。2003(H15)ギャルリさわらび個展(開廊記念)、以後12回。2010(H22)東御市梅野記念絵画館「私の愛する一点展」出展、以後毎年。2012(H24)櫻井研氏により「櫻井陽司會」設立。2013(H25)東京芸術劇場「心のアート展」特別展示、安彦講平氏推薦、ギャルリさわらび協力。2015(H27)愛知県美術館木村定三コレクション展にて20点公開。2018(H30)「不合理ゆえにわれ信ず」展、ギャルリさわらび。

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